「ムキエビ急いで解凍して」
トシくんの声が飛んだ。
「あれっ? ストックない?」
驚いたような桂木さんの声。
「ないから言うてんねんっ」
大型の冷凍庫から戻し忘れたのは、どうやら桂木さんのミスみたい。
「はーい」
うるるんがカチコチに固まった業務用のパックを、開封してレンジに入れた。
普段なら前日から冷蔵庫に移しておくんだけど、急ぎの場合は電子レンジで解凍する。
「手で割れるようになったら、エビ玉一枚分先に持って来て」
「はいっ」
頃合いを見て、桂木さんがレンジの中からエビを一掴み、小さなザルに取った。
ザルごと水を通すと、トシくんの手のボウルの中へ入れようとする。
「あ、中まで火を通したいから、それだけ先に鉄板に載っけてください」
トシくんの言葉に、桂木さんはザルを逆さにして、鉄板に海老を投入した。
「わ、あほ、跳ねる……っ」
油をたっぷり引いた鉄板に、水気を切らないままのエビをぶちまけたので、バチバチバチッと油が跳ねて飛んでくる。
「うわっ、」
油の直撃に仰け反るトシくんを、ガバッと抱えるように桂木さんが覆い被さった。



