「で、どうやった? 西条さん」

「楽しそうに飲んではりましたよ」

「そうか。よかった」


「案外……いい人でした」

「やろっ?」


オレの言葉に、桂木さんはものすご~くうれしそうな顔をした。


「えっと、いろんな話聞かせてもらいました」

「そっかそっか~」


う~。満面の笑みに、胸が痛む。

あんたのことはめちゃくちゃ嫌ってます、とは言えんよな。

いや、言うべきか、もしかして。


西条さんはあんたを辞めさせる気らしいと、伝えておいたほうがいいかもしれない。

富樫さんのことも。
3万円の件も。

あの人はサラリーマンを毛嫌いしていて、桂木さんのことをタヌキだと言ってたってことも。


タヌキ……か。


確かに、何を考えてるのか、よくわからん人ではある。

柔らかな笑顔を、まじまじと見入ってしまった。


「え、何?」


その視線に、桂木さんがキョトンと首を傾げる。


「や、何を考えてんのかなって思って」

「オレ? 掃除中に?」

「はい、まぁ……」


「今は……『沢井さん問題』についてかな」


オレの問いの歯切れの悪さには気づかず、桂木さんは難しい顔をした。