「まー、何かあったらオレに言ってこい。お前やったら本部に推薦したるから、直営店で店長張ればええ」


桂木さんには相当辛口の西条さんが、自分には同業の先輩として、思いのほか温かい目を向けてくれている。

それがすごく意外で、そして素直に嬉しかった。



「オレな、富樫から3万円もらってん」


また杯を飲み干して、西条さんがそう言った。


「えっ?」

「あいつ、店辞めてからオレのとこに挨拶に来たんや。で、オレがアメ村へ研修に行くことを話したら、金を渡してきてな……」

「な、なんでですか?」

「自分の後釜にサラリーマンが赴任してくるはずやから、そいつをイビって辞めさせてほしいって言うねん」

「えーっ。だから西条さん、あんなに桂木さんのこと目のカタキにしてたんですか」

「それもある」


西条さんがイタズラな笑顔を浮かべた。


「富樫は自分が辞めたら、店は立ち行かなくなると思ってたようや。それがそーでもなさそうで、ムカついたらしい」

「は? ムカつくのはこっちでしょ」


思わずそう言い返した。

それにしても、辞めた後のことをそんなに知ってるなんて、富樫さんはやっぱりあのバイト連中とつながってたんやな。