「富樫はドン臭いところのあるやつやから、お前みたいにカンがよくて、センスの光るタイプには、底知れぬ劣等感を抱いてんねん」
西条さんの箸が、煮魚の身をほぐす。
「見てないのに、よくわかるんですね」
「どこの店でも似たようなことがあるもんや。富樫も一生懸命なええ子やったんやけど、途中で、なんか雰囲気変わったな」
「は……い」
本当によくわかっている……。
「安西、お前、流れ星何年目?」
杯をグッと空けて、西条さんが聞いた。
「アメ村店オープンのときからなので、二年半になります」
「ふうん」
鋭い目がチラッと、オレの顔を見る。
「ひとりでよくがんばってきたな」
「え、」
意外すぎる言葉に、思わず絶句した。
横を見ると、西条さんは煮付けの白く柔らかい身を、おいしそうに口に運んでいる。
「うまいな、これ」
「はい」
冷酒のお代わりをもらい、しばらくふたりで黙って飲んだ。



