それからサロンのポケットから、万札を二枚取り出して、オレに差し出す。
「足りるかな?」
「や、これで充分です」
オレはその札を一枚だけ受け取った。
「安くでウマいもん食わす玄人好みの店、知ってますから」
すると桂木さんは、なんだかしみじみとオレの顔を眺める。
「トシくん、キミはほんまに、よく出来た子やなぁ」
「いえ……」
今それを言われるとツラい。
自分の欠点をズバリ言い当てられたところだから。
オレは人に媚びないから嫌われる。
ずっとそう思って来たし、それでいいと思っていた……。
だけどこの人は、ほんの数日一緒にいただけで、それがオレのダメなところだと見破った。
今までいろんな大人と接してきたけれど、こーゆー諭され方をしたのは、初めてやな。
怒鳴ったりバカにしたり、ではなく、やんわりと、でもしっかりと目を見て……。
「じゃあトシくん、頼むな」
「はい」
いつのまにか敬語になっていた。
なんかムズがゆいけど……
それも悪くなかったりする。



