「豚や魚介はよく火を通してな。いつも食中毒につながるかもしれんって、頭に置いといて」
「野菜炒めは手早くやらんと、野菜から水分が出て、シャキッと仕上がらんから」
それでもそんなアドバイスは、気づけば即インプットしてやる。
開店前の準備中、客卓がまたワンセット、電気のカサまでピカピカになっているのを確認した。
桂木さんが来て以来、毎日1卓ずつ磨きあげられている。
オレが帰った後ひとりでそうすることを、桂木さんは日課にしたようだ。
で、オレは密かに、それを確認するのを日課にしている。
ん~、何様や、オレ。
初めはいつまで続くかと思っていたけれど、あの人ならきっといつか、ホール丸ごと全部ピカピカにするよな……。
そんなことを考えていると、不意に後ろから声をかけられた。
「トシくん。今夜あたり西条さんを飲みに誘ってもらえませんか?」
「はぁ?」
突然の申し出にぶっ飛ぶ。
「何でオレ? イヤやけどな、あんなやつ」
「いや、ずっと誘ってるんやけど、オレはどうも西条さんに相当嫌われてるようで……」
「は? キライはこっちやろ」



