「西条さんは、なぜか桂木さんを目のカタキにしてるからな……。ちゃんとできたらできたで、しゃくにさわるんちゃう?」
オレらがそう話している間に、桂木さんは鉄板を片づけ、調理台の上で、もうキャベツを切ろうとしていた。
「あれ? ほんまに千切りの練習するん?」
「もちろんです」
うるるんに驚かれても、本人いたって真面目。
おそらく悔しまぎれに命令したであろう西条さんの指示通り、キャベツの千切りを練習しだした。
「あっ。食材をムダにしたらあかんと思って、キャベツを3玉自腹で買って持参しましたんで、安心してください」
律儀にそう断り、力いっぱいキャベツを切る桂木さん。
その横顔は真剣そのもので……。
それを見ながら、思わず3人で顔を見合わせてしまった。
「けなげやわ、店長……」
うるるんが横につき、力の抜き方や、包丁の使い方をレクチャーしだす。
「あんなに真面目に取り組んでるのに、ちゃんと研修してもらえないなんて、許せないです」
憤慨するユースケは、スマホで隠し撮りをする方法をいまだ模索中だ。
だけどオレは……、
桂木さんがこの悪意に満ちた西条さんの研修をどう乗り切るのか、ちょっと見たい気もしていた。



