午後9時前、講義を終えると西条さんは、さっさと帰って行った。
どうやら昼の1時から夜9時までが、上から決められた時間らしい。
「西条さん、店を締めたあと連絡しますんで、一緒に一杯いかがですか?」
なんと桂木さんは、店をあがる西条さんを、飲みに誘っている。
「はぁ? いらんいらん。お前となんか絶対に行かんからな。酒がまずくなる」
吐き捨てるように断ると、西条さんは店を出ていった。
「なんであんなやつ誘うねん」
洗い場へ向かう桂木さんに言葉を投げる。
「あー、話してみたかったから…」
すると桂木さんは、ポツリとそう答えた。
「あいつ、ちゃんと教えてくれたんか? 焼き方」
「いや、自分で焼いて覚えろって、見本も見せてくれへんから……。あはは、すごい怒られた」
「『あはは』じゃないやろ。チェンジ出来へんの? 研修してくれる人」
あんな教え方で焼けるようになるとは思えない。
「西条さん自分の店もあるのに、ずいぶん無理して来てくれてるらしいねん。ちがう人にしてなんて、よう言わんでしょ」
桂木さんは、そう済まなそうに眉を下げる。
まさか、自分がイビられていることに、気づいてないんか、この人……。



