新生オープンの翌夕、オレが店に出勤すると、厨房へ向かう入口の陰でうるるんが立ち尽くしていた。


「おはよ、どないしてん?」

オレの声に驚いて、うるるんが振り返る。


「どうしよ、トシ。店長めっちゃ怒られてんねん」

「え?」


ちょうどこの位置からは、厨房の中がよく見える。


「なんか入りづらくって……」

うるるんはここから密かに様子をうかがっていたらしい。




「あほかっ。こんなもん客に出せるかっ」


ちょうどそのとき、厨房から罵声が飛んだ。


「中身半生やないかっ」

「す、すみません」

「ほんま物覚え悪いな、ボケが」


ドゴッと鈍い音がして、見知らぬ男が例の桂木さんのスネを蹴ったのが見えた。

えー……。


「さっきから店長、ずーっと蹴られっぱなしやねん。ヒドない?」

「うん。本部の研修係の人かな」

「しっかり説明もせずに、怒鳴ってばっかり。こんなんイジメやん」


うるるんは今にも泣き出しそうになっている。


「パワハラですね」


いつのまにか来ていたユースケも、厨房を覗きながらささやいた。