「ん」
とトシさんが店長に油引きを渡す。
「焼くときはな、鉄板が熱々になってなかったらあかんねん」
「は、はい」
「ここの鉄板は電気制御でいつも適温になってるけど、感覚でも覚えときや」
「あ、はい」
トシさんが後ろのシンクの水道で指先を濡らし、パッと鉄板に振りかけた。
水滴は丸い粒になって、コロコロコローと鉄板の上を滑る。
「鉄板の温度が低いと、ジュワーて浸み込むだけでこんなふうにはならんねん。だから料理も焦げつくっちゅーワケ。あんたもやってみ」
トシさんに促されて、桂木店長も鉄板に水滴を振りかけた。
コロコローと丸い粒が走る。
「あは、可愛いですね、水滴」
「……」
のん気な発言に、今トシさんがイラッときたのが、ボクにはわかった。



