厨房に戻ると、トシさんがうるるんに言った。
「空いた皿下げながら、『何かもう一品焼きましょか』って聞いてって」
「はい!」
一段落ついても鉄板が空になることはなく、だらだらと追加オーダーが入る。
あんなにテキパキとしているところを、はじめに見てしまったから、ゆったりと焼いているトシさんは、何だかつまらなそうに見えて可笑しかった。
「バンドやってるとか知らんかったわ」
不意にトシさんに話しかけられた。
「てか、しゃべったことないもんな、オレら」
「ですね」
今日だってそんなに話した訳ではないけれど、この数時間でグンと距離が縮まった気がする。
あの嵐をともに乗り切った連帯感は大きい。
「もっとしゃべっとけばよかったッス」
なーんて、ひとり言のようにつぶやくと、トシさんがチラッとこっちを向いた。
「な」
なんて笑ってくれた。おー……。



