「お前今、もち入れてなかった?」


鉄板の前に並んでお好み焼きを焼いていると、不意にトシさんにそう言われた。


「え、はい」


「それ何番テーブルの何?」


手を止めずに聞かれる。


「8番のエビチーズです」


「そうやんな」


と言いながら、トシさんは手元のお好み焼きを、ぽんと引っくり返した。




「はい……。あっ、しまった。ボク、エビチーズって言いながら、もちチーズを作ってる」


「な」


とトシさんの顔がこっちを向く。




「すっ、すみません! すぐに作り直します」


ヤバ、怒鳴られる……!


思わず身をすくめたけれど、トシさんはスラッとこう言った。




「えーよ。オレが作る」


え?