「もう勘弁してくれや……」
トシくんが情けない声を出す。
「でも初めてですよね。下げろって言われる前に、店長が自分で気がついて客席へ向かったんは」
トシくんの隣で焼きそばを焼いているアルバイトの男の子が言った。
「は? 今の、自分で気がついたうちに入るん?」
「入りますよ、さっきまでより、ずうっと早かったですもん」
「それはそうやけど……」
えーっ、あれで?
桂木さんがどやされているのには、それなりの事情があるようだった。
「わ、沢井さん」
食器を引いて戻って来た桂木さんが、初めてわたしを発見してくれた。
「うん。来てん、へへ」
「あは」
ふたりして小さく笑う。
なんの『あは』?



