ビールを持っていくとき、そのトシくんが接客している近くを通った。
「熱々やから、気をつけてお召し上がりください」
なんてやっている。
おお、スマイル……!
あんなにキレ気味で最悪に口が悪いくせに、トシって子、客席では柔らかな笑顔を見せていた。
う、プロやな、あいつ。
そのキレイな笑顔に、客席の女子がぽーっと見とれていた。
「ありがとうございます!」
厨房へ戻ってしばらくすると、お客様が一組席を立った。
「「ありがとうございまーす」」
みんなで繰り返しながら、うるるんがレジへと向かう。
空いたテーブルを片づけようと、トレイを持ってホールへ出ようとしたら、焼き場のトシくんに引きとめられた。
「今日はそれ、全部あいつにさせるから」
ん、と顎で洗い場の大きな背中を指す。
「桂木さんに?」
「うん。あいつ、それぐらいしかできそうにないし、今日は徹底して『引き』と『洗い』を覚えさせるわ」
なるほど。
案外考えてるんや。



