「なかなかの遣り手やで。つーか大人やなと思った」


ユースケが言った。


「けど素人やねんで」


店長のくせに。


「あんまイジメたりなや。トシは言い方がキツイねん。カチンと来たらすぐ顔に出るし」


と、うるるんにたしなめられる。


「うるさい」


「ほらほら」




みんなで手を動かしながらそんな会話をしていると、デカいのが布巾を洗いに戻って来た。


ゴシゴシと、これまた熱心に洗っている。


その近くへ行き、うるるんが声をかけた。


「なぁ店長、なんであんな必死にユニフォームを回収しとったん? 召集の電話のときから言ってたやろ? ユニフォーム持って来てくださいって」


「あー、あれは経理の沢井さんに頼まれたから」


水道の蛇口をキュッと締めて、男が顔をあげた。


「恐いんですか? その沢井さんって」


今度はユースケが話しかける。


「いや、彼女には世話になってばっかで。たまに頼まれたことくらいきちんとやっとかなアカンからな」


そう言うとそいつはにっこりと笑った。


うわ、やっぱヘンなやつ……。




まーそーゆーワケで、暗澹たる気持ちを振り払いながら、オレらは取り急ぎ開店準備を進めた。