「キミは店、続けるん……かな?」
男はオレをユサユサと揺さぶってくる。
「とりあえずは、な。あんなヤツらと一緒に辞めたと思われたくないし」
「そうか。よかった……」
安堵したように息をつくと、男はパッと腕を離した。
「社長は今日、昼から海外出張でな、店のことずいぶん気にしながら旅立たれた。キャンセルは難しい仕事やったから」
それから男はゆっくりと説明を始める。
そーか、社長は出張やったんや。
「で、流れ星のことは、全部オレに託して行かはった」
「へぇ~」
「『不満がくすぶる従業員の人には辞めてもらう覚悟でいいですか』って社長に聞いたら、『ひとりだけ、どーしても引き止めて欲しい』って言われてん」
男はポケットから小さく丸まった紙切れを取り出すと、それをオレの手のひらへ載っけた。
「この子だけは何としても引き止めろと、それがお前の初仕事やって言われてたんやけど、興奮してすっかり忘れとったわ」
男の顔がやっとほころぶ。



