『晴琉ちゃん!』
うっ…
まただ…
みんなと帰る時間ずらしているのに、いつもいつも廊下で私を待っている王子様…
「…」
『なんで最近、俺に冷たいの?』
「王子様はみんなに優しい…ですから」
今日は立ち止まって話を聞いた。
てか、今も誰かに見られてたら困るんですが…
明日、嫌がらせ受けたり…
王子様のファンクラブとかもあってもおかしくはないし。
『みんな王子様って言うよね?
俺、そんなふうに見える?』
「ん〜〜〜〜ん…」
『長いよ!』
「見えなくもないです」
実際、言われるまで存在を知らなかった私だ。
王子様なんて、漫画の世界だけと思っていたから…
御曹子だったり、医者の子だったり、大金持ちだったり…
近寄りがたーい存在。
『晴琉ちゃんは、大翔って呼んでよ…』
「はい!?」
『王子様なんて柄じゃないからさ』
「やです!」
『えぇぇ!?』
いきなり下の名前だなんて…
そんなに知らないのに、下の名前で呼ぶことはさすがに気が引ける。
名前しか知らないんだもん…
誕生日も好きな食べ物も…
「ごめんなさい。」
王子様と目を合わせずに、廊下を早歩きで立ち去った。
私、怒ってる?
会えて嬉しいはずなのに…
王子様が毎日廊下で待っていてくれているのに。
他の子からしたら羨ましいことかもしれない。
けど、王子様には静香さんがいるもん!
その人に向ける笑顔も、他の子に向ける笑顔も、みんな一緒で輝いてるもん。
自分がわからなくなる…

