「女の子…?」
「カイの隣にいた」
キスだってしてくれない。
好きだって言葉もくれない。
抱きしめられたのだって、今この瞬間が初めてで。
「カイのあんな顔初めて見た」
「……あぁ、あれは」
「私が唇テカテカにしてたときは、笑ったのに」
「……え?」
「あの子ならいいんだ」
「唇…って」
「キス…だって…して、くれないじゃん!!!」
言っているうちに、怒りやら切なさやら苦しさやらが一気に込み上げて来て、力づくでカイの腕を引き剥がした。
離れた私を咄嗟に捕まえようとしたカイの手が宙に浮いたまま止まった。
「もぉ、嫌だ…」
「…っ」
止めどなく溢れる涙を右手で拭う。
「…今まではっ、周りに何言われたって、構わなかった…カイが、私のこと思ってくれてるなら、って…」
「……思ってるよ、今でも」
「思ってない!」
反射で否定した言葉で、溜まっていた涙がこぼれ落ち、苦しそうな表情をするカイが目に入った。
