「わーここ、すごく景色が綺麗だね」

「ほんとだ!すごい綺麗ー」

目の前の女の子たちが
海の景色を見て喜んでいる
私は中島彩咲(なかじまさき)中学三年生
生まれた頃から
色が見えなくて
全部が白黒
だから、海や夜景
綺麗な場所を見に行っても
色が見えないから
全然楽しくない
しかも、生まれつきはもう1個あって
体が弱くて
病院にいつもいるから
私専用のベットがある
いつも退院しても
戻ってくるから

体が弱いせいで
遠くに
だから、病院の近くにある
ここの海に来たのに
楽しくないから
来た意味がないよ

「はぁ」

海辺のベンチに腰を下ろし
足をぶらぶらさせる

「なんで、ため息ついてるの?」

後ろから声をかけられて
振り向く
身長が高くすらっとしていて
優しそうな顔

「楽しくないから」

視線を前に戻し
遠くを見る

「なんで?こんなに綺麗なのに」

隣に座ってきて
彼も前を見ている

「私には色が見えないの」

今まで何回同じセリフを
言ってきたのだろう
口癖みたいに私の口からでる

「いいなぁ」

「え?」

初めて言われた
今まで、可哀想やもったいないなど
言われてきたけど
いいなとは初めて言われた

「何がいいの?」

物心がついてから
1度もいいと思ったことはないし
思いたくもない
人より人生を楽しめていないようで

「何でもない」

彼は立ち上がり
歩き出す

「ま、まって!」

私は彼の手を掴み
引き止める

「名前...名前教えて欲しいの」

消えてしまいそうなぐらい
小さな声

「俺の名前は神山蓮音(かみやまれん)」

蓮音...れん
忘れないように
何回も言った
頭に焼き付けるように

「じゃ、また会えたら」

「...行っちゃった」