『いっちゃん!慶介くん待ってるよ?』




『へ?校門?!やば!じゃあ奏乃またね!』




『うん。またね〜。』






私西山奏乃(にしやま かの)。
高校1年。



恋愛経験なし。
初恋もなし。




『あれ。西山さんまだ残ってたの?』




『桜月くん。もう帰るよ。桜月くんは?』



『俺は委員の仕事。気をつけてね。』




彼は桜月奏多くん。
クラスの学級委員で、優しい男の子。




『桜月くん、1人なの…?前田さんは?』




『あー…今日はなんか用事あるって。』





『そっか…。私手伝うよ。今日用事もないし。2人でした方が早く終わるでしょ?』



私は桜月くんの正面の席に座った。
桜月くんは驚いてたけど、すぐに笑った。



『ありがとう。西山さん。』



『ううん。早く終わらせよ!』




それから他愛もない会話をしながら、作業をして終わったのは6時。



『ごめん。予想以上に遅くなっちゃったね。送るよ。』



『ううん…!いいよ。私が好きで残ってたんだし。じゃあ私はこれで帰るね?ばいばい、桜月くん。』



手を振ってバッグを持って教室を出る。




『待って!』



『え?』




『やっぱ送る!靴箱で待ってて!絶対だよ!』



そう言い残して、先生に資料を渡しに行った。