その日から、私は桐沢くんのことが頭から離れなかった。
私は、小学校のころから男子とはほとんど話したことがなく、女友達ばかりが増えていた。だから、わたしにとって「格好いい」なんて感情はわき起こったことがないのだ。
それにしても本当に格好かったー
顔は、ちゃんと見えなかったけど短髪のサラサラしている髪が特徴的だった。
上から見ていたから背とかはあんまり分からなかったけどたぶん、私より高いと思う。でも、それより、あの華麗なドリブルだよねー
「希李、今日やけに、にやにやしてるよね」
なんとなく、美音に引かれてる気がするけど私はあの日から桐沢くんの事で頭がいっぱいなんだ~

「あ、そうそう。一応言っておくけど桐沢くん。うちの学校だからね。」
そういって、髪をいじる美音。
「え。ぇえっー!!」
私は、びっくりして立ち上がる。
その衝撃でみんながこっちをガン見した。
美音が私の腕をつかんで座らせる。
「ちょ、希李!どうしたの、いきなり」

「だ、だって、あんなすごい人がう、うちの学校にいるな、なんて・・・」

「うん。いったん、落ち着こうか」
そういって、美音がお茶を渡してくれた。
それを、ぐいっと飲み干して息を整えた。
「まぁ、確かにすごい子だよね。普通にユースのレギュラーだし。それに、u-18の代表だし。」

「え、桐沢くんって16歳だよね?」

「才能がすごすぎるんでしょ。飛び級ってやつだよ。噂によれば、オリンピックもでれるんじゃないかって」

「オ、オ。オオ、オリンピック!!」
私は、またもや立ち上がってしまい、みんなの視線を浴びた。
「もう、希李!恥ずかしいから大声出さないでよ」

「ご、ごめんごめん。だって、ほんとにびっくりしちゃって」

「うちの学校は、平凡ってゆうか、地味とゆうか・・・」

「確かに。なんか、これといって目立ってることもないよねー」

「そこに、スターがやってきた感じだよね!」

「わかるー!」

キーンコーンカーンコーン

ちょうど盛り上がってるときに空気の読めないチャイムだ。ほんと。
美音は、じゃあねといって席に戻ってしまった。残念ながら、美音と私は席が遠いからなかなか授業とかは話したり出来ない。ほんと、最悪だよねー
古典の授業で池田先生が入ってきて
「おーい。誰か、あっちの東校舎の図書室から参考書もってきてくれるやついないか?」
 
古典の池田先生がみんなに呼びかける。
でも、誰も反応なんてするわけない。
だって、東校舎なんて何分歩けばつくんだってくらい、遠いしましてや図書室なんて行く人ほとんど────
「じゃあ、誰もいないから水谷!お願いな!」
「えっ!?」
ぱっと、見るとにやにやした池の顔が見える。
メガネの奥から見える瞳に意地の悪さを感じる。
「なんで、私なんですか!」

「だって、この前テスト一番悪かったもんな~」
ぅう。くそー。これをいわれたら返す言葉ないじゃん!
もう!あの、ハゲオヤジめー!
心のなかでいえない怒りを叫んで教室を飛び出した。

「なんで私があんなところまで取りにいかなきゃなんないんだよ、もう!」
ぶつぶつ、池田先生の愚痴をいっているといつのまにかついてしまった。
でも、鍵が開いていて靴が置いてあるのに気づいた。
「ん?誰だろ。でも、赤色だし一年だよね」 
まぁ、授業で使ってんのかな~
とか思いながらガラガラってドアを開ける。
ぱっとみ、人がいる気配はなかった。
広いからきっと奥に人がいるんだろう。
そこまできにしていなかったけどとにかく参考書を探した。
参考書はあんがい近くにあって、借りようとおもってカウンターに持って行った。
でも、カウンターには誰もいない。
「あれ、いつも誰かいるのにな・・・」
そうつぶやいて、カウンターにあった用紙に目がいった。
そこには、聞いたことのあるなまえ。
桐沢 春
「桐沢・・・ん?はる?」

「しゅう」

「あ~しゅうって読むんだ。」
・・・て、あれ?私いま誰と話してたんだろ。
後ろを振り向くとそこには昨日みた、短髪でサラサラした髪のスターがたっていた。
「ぇ、ゎわわっー!」
驚いて、また叫んでしまった。
桐沢くんは、そんな私に少し驚いていた。
今日何回、驚いたら気が済むんだ。ほんと

ぱっと、みるとじーっと私を見つめていた。
でも、よくみると綺麗な顔してる。
昨日は遠かったしあんまりわかんなかったけど近くで見ると変わってくるんだなっておもった。

「俺のこと知ってるんですか?」
大きな切れ長の目を私にむけてそう言った。
「・・・え、あ、まぁ一応。」
思ったより、高い声してる。
「昨日、来てたんでびっくりしました。」

「ぁあー昨日ね。美音に誘われて見に行ったんだ。」
あー、どうしよう。なんか、緊張するー