すると、


「あ…」


そこに一人でおった。

あの時の先輩…


「ちょっと、行ってくる」


「は?どこに行くねん」


望を置いてその人のもとへ


「あの…」


「…あ……」


その人のリアクションは、思っていたのとは違っていた。

俺のこと、知ってるみたいな…


「あの、入学式の時、受け付けしてましたよね?」


「うん。まぁ…」


困惑したような顔。

そりゃそうやんな、急にこんな声かけられてんねやから。


「何年生なんですか?」


「2年」


一つ上か…


「藤崎くん…だよね?」


「え?なんで…?」


「噂されとるから」


噂って他学年にもまわっとるん?


「何か用?」


「あ、えっと…お名前聞いてもいいですか?」


「…ナンパ?」


「なっ、ちゃいますよ!」


少し大きめの声を出してしまい、しー、と人差し指を立てられた。


「すいません…」


「森真由美」


「森、さん…」


「で?それだけ?」


いや、それだけ…というか…

俺、なんで話しかけたんやっけ?

見切り発車すぎたわ…

でも、考えるより先に、口が動いてしまった。


「森さんのこと好きになってもうたんですけど」


先輩はぽかんといった顔をした。

驚いたのは先輩だけではない…

張本人である俺も驚いた。

無意識にそんなこと口走るって、多分本気で好きなんやと思う。


「…あ、ありがとう」


「あ、いえ…いやっ、え?」


いやいやいや、それはどういう意味すか?


「私ね、真面目で大人な人が好きなの」


「…え?」


「君みたいなチャラいの。好きにならんって言うてんの」


食べ終えた食器を手に、先輩はそそくさとその場から離れていった。


「…フラれ、た?」


俺の一目惚れは、ものの2週間で砕けた。