きっと、『またね。』

「…今日子様。琴の先生がいらっしゃっていますよ。」

「あ…。すいません、今向かいます。」

「はい。お茶を用意致しますね。」

私は駆け足気味で入り組んだ廊下を抜けて、そこそこ広さのある和室に来た。

「あら、今日子さん。前回お教えした曲は練習致しましたか?」

「ええ。」

このおばさんは嫌いだ。

何かと私の演奏に口出してはため息をつくからだ。

それを学習したときから、私は誰にも文句を言わせないような演奏ができるように、練習をし始めた。

「……。」

畳のへりの上に座らされて、足首が痛い。

けれど、琴に手を置いたら、そのときからもう私の世界。