部屋に戻っても、あのときの奈々さんが頭に焼き付いて離れない。 

 


嫌われてしまったのかもしれない。



それもそうだ。




大事な婚約者と私みたいな他人が一緒に一夜を明かしてしまったのだから。






トントン




「っはい!」





「…私、奈々やけど。入ってもいい?」



奈々さん?




「どっどうぞ!」




スッ




さっきとは違う優しい顔の奈々さんが立っていた。



「大丈夫?昨日は雨で災難やったなぁ…大河から全部聞いたわ」



全部…





「でも無事でよかったぁ…大河居なくなったら…うち生きていけんもん」




何だろ…



何か焦ってるように見える。




「知ってると思うけど、うち大河の婚約者やねん。こんなうちを好いてくれてる…」



何が言いたいの?




やめて……



「唯ちゃん…











大河と二人っきりになるの…やめて?」















ズキッ






婚約者なら…そう思うのは当然だと思う。






大好きな人が他の女と一緒に居たら嫌に決まってる。





「大河、女遊び激しいから…もし唯ちゃんに手だそうとしたらそれは遊びだから!本気にしない方が唯ちゃんも傷つかんですむよ?」




やめて…




分かったから…








もう諦めるから…







これ以上何も言わないでっ!








トントン…





運良くドアを叩く音が聞こえた。



「姐さん。そろそろ時間です」



「勇気…分かった。今行く。唯ちゃん、そーゆう訳やから…約束やで?」




奈々さんは念を押して、部屋から出ていった…。






静まり返った部屋






「私…ここに居ちゃいけない気がする」




だって…









大河さんと奈々さんの邪魔になるから。






結局私の居場所は…どこにもないのかもしれない。