学校なんて、どうしてあるんだろう。
花夢は、いつだってこのことしか考えていない。
勉強するだけなら、家でやればいいじゃない。なんだって、こんなとこにわざわざ来なくちゃいけないの。
花夢が、嫌がるのにはそれなりの理由がある。
花夢は、自分が、特に自分の名前が嫌いなのだ。学校に行きたくない理由も、正にそこにあるのだから。
「花夢」と書くと、大抵の人は「はなゆめ」と読む。
まさか「かむ」とは読まないだろう、と…
しかしその、まさかが花夢の名前なのだ。
名前を‘正しく′呼ばれたときの恥ずかしさと言ったらない。
おかげで、筆箱はいつもゴミ箱の中。もちろん、トイレに良い思い出などない。
花夢は、自分にこんな名前を付けたヤツを見つけ出してボコボコにしてやりたいと思った。
でも、それがかなわないことだということは目に見えていた。