「しっかりするのよ。彩加」

娘が急に倒れたのは、この吸血鬼事件という奇怪な事件が広がってからである。薗箕家の長女薗箕彩加(そのみあやか)は倒れる前から不思議な事を口にしていた。その言葉は母親の耳にもちゃんと残っている。
それは――。

「“化物が来た”、ですか?」
「はい」

母親は家に来てくれた医師にこの事伝えると担当の医師は半分半疑で頷く。母親にしては信じてくれていないのがまる分かりだった。もちろん自分もそんな事は信じていない。

「とりあえず今の医学では娘さんの病態は何とも言えません」

体のほうには何の異常も診られなかった。医師はおかしいなぁと首をひねるしかない。こんなに苦しんでいるのにどこも異常がないなんて、母親の心配度は益々悪化していった。

「どうしてですか!こんなに苦しんでるんですよ!それなのに…!」