毎朝親父に弁当を届け、彼女に会うー
「澤村、おはよう」
「おはようございます、あお……ううん、新垣さん」
恥ずかしそうに挨拶した。
「あ……いや、さんなんて堅苦しい、あおでいいよ」
「でも……新垣先生の息子さんだし、それに……」
「それに?」
蒼白い顔がみるみるうちに赤くなっていく。
何だか可愛い……
「さ、病院の中だけど、どこ行きたい?」
「外に……行きたい……」
「でも、また倒れるぞ、いいのか?」
「うん、先生や蒼く……んには迷惑……かけないから……」
「じゃ、少しだけな?またあんたが倒れられると親父がうるさいから」
少し悲しい顔をしたー

「あの……手をつないでくれませんか……?」
いっぱいいっぱいの言葉
「いいよ、これくらい」
悲しい顔が一瞬にして明るくなった。
うぐっ……この笑顔、反則だ……
冷たい手をとり外に出た。
時々俺の顔を見ている。
目が合うと真っ赤になる。
この娘、以前から俺を知っているー?
そんな感じがした。
「今日はそんなに暑くないからいいね、でも疲れたら俺に言えよ?」
「うん、ありがとう……」
「あんた……澤村はいつからここに?」
「私が7つの時からかな……生まれつき身体が弱く、よく病気してた。母さんにも迷惑ばかりかけてしまって……私の所母子家庭なんだ、私が産まれる前に父さんが亡くなって……だから母さんだけには迷惑かけたくないけど迷惑かけてしまって……」
俺と同じなのにこうも違うんだ、本当に心が強いんだな、俺と違って母さんが死んでからはいつもウジウジしてた。
父さんにも迷惑かけて、死んだ母さんにも……
「私ね、いつも病室の窓から青空を見てたの、とても綺麗で大好きなんだ。だから次は外で見たいなっていつもここで見ているんだ」
少し赤く汗ばんでいる?
「中に入ろうか、疲れているみたいだから……あ、そうだ澤村は何が好き?」
「笑わないでね?あの……私……白玉あんみつが好き……なの……だから母さんが来たときはいつも買って来てくれて食べているの、でもすぐ戻しちゃうし……だから病気が治ったらいっぱい食べたいなって……」
「じゃあさ、澤村が元気になったらさ、その……俺と一緒に食べようか?」
「え?いいの?あんみつなんて女の子が食べる物だよ?それに蒼くん甘いもの……」
「一度、母さんと食べたことあるんだ、恥ずかしながら、甘党なんだ。だから……」
俺、きっと真っ赤だよな……それに男が甘党なんてドン引きだよな……
「行きたい、絶対行きたい!嬉しい、ありがとう」
「じゃ、約束な」
でもその約束も果たせなくなってしまったのはまだ先の事ー