達貴が大きなため息を吐く。

「今日のところは、話し合いはここまでにしよう。……お前ら、次までに〝こどもらしい〟悩みを考えとけよ!」

それに対して、「はーい」やら「へーい」やら「うん」やら「わかった!」やら、みんなそれぞれ適当に返事をして帰っていく。

「あっ!そうだ。今日の話、みんなヒミツね!」

思い出したように理恵が言うと、それぞれ頷く。ここで話したのは、本来なら外に持ち出してはいけないひみつの悩み。

ぼくらはヒミツを共有していた。誰にも言えないことを、このひみつ基地で。誰にも言わないでくれる大切な友達と。

ひみつ基地。
それは、ぼくらが唯一素直に弱音を吐ける場所だった。素直に笑える場所だった。

誰にも言えない悩みだって、笑い話に変えられた。

公園の木の影。
通行人にはちょうど盲点となる絶妙な場所。



ぼくらのひみつ基地。





数年後、ぼくらは中学生になって、もう、ひみつ基地に集まらなくなった。

そして、知った。あの公園から一番近いところに住んでいた理恵から。

「ねえ、あそこの公園の木、私たちのひみつ基地。切り倒されちゃったんだよね。」

それはもう、なんてことないみたいにラサリと。でも、その目には少しだけ、涙が滲んでいた。

「ぼくらのひみつ基地、壊されちゃったんだな…」






ぼくらがぼくらでいられた場所が、なくなっちゃった。そう思った。


















でも、違った。