学食はあまり美味しいわけではなかったが、不味いと言うほどでもなく、値段相応といった感じだった。

「彰はリア充?」

一樹が言った。リア充というのは俗語であり、リアル充実の略だが、恋人がいることを意味する場合が多い。

「そんなの居ないよ。大学入ってサークル入ったら出来るもんだと思ってたんだけどな。」

「俺は高校の頃から付き合ってる彼女いるよ。」
隼人が照れくさそうに話した。
「でも大学は他県になっちゃってさ、遠距離なんだけどね。」

一樹が興味津々といった表情で隼人に詰め寄る。
「マジ?いるの?写メ見せて。」

「見せるの?期待するほどじゃないからな。えー、あんまり無いんだけどな。ちょっと待って、探してるから。」


スマートフォンを取り出して保存ボックスを開く隼人は「期待するなよ。」と言いながら、少し顔を赤らめている。僕は大して興味は無いが、少し口を挟んでみた。

「隼人の彼女はやく見たいな。」
「な!まだかよー!」

「プリクラでいい?あいつプリクラばっかり送ってくるんだけど。」

はぁ、と一樹が溜め息をついた。
「プリクラとかさ、全然顔違くね?あれ詐欺でしかねえよ。」

「わかったよ、普通の写真な。」と言いながら、隼人はスマートフォンの画面をこちらへ向けた。 

「お、まぁ可愛いじゃん。プリクラじゃなくてもべつに良くね?」
一樹は率直にものを言うタイプの人のようだ。

「プリじゃないと人に顔見せられない、っていつも言うからさ。ほら、これプリクラ。」  

「げ!これ怖いじゃん。目でか過ぎ。人間じゃない。」

僕もそう思った。女は、目が大きければ大きいほど美人に見えると思っているのだろうか。

「俺も写メのほうがいいと思う。」  

僕は笑いながらそう言った。隼人の彼女は茶髪で、大きな目がくりっとしている。唇はふっくらしていて女性らしく、鼻は高すぎず低すぎない。

顔の形は例えてみれば卵形で、美人な印象を抱いた。 


 ふと、町田沙希が頭をよぎった。

彼女の魅力は一体何なのだろう。目はあまり大きくないが、黒目が大きくてキラキラしている。唇は薄めで、口自体が小さい。鼻は高く無いが鼻筋が通っている。

そして白い肌はまるで指で触れたら透けて指が通りそうだ、と思った。こういうのを透明感と言うのだろうか。 

 しかし、ふっと横を向くと、どことなく寂しそうな表情に見えてしまうのは僕だけだろうか。こんなことまで勝手に考えている自分が気味悪く感じた。