《奏翔side》


あいつ…

あんな顔してたんだな。


放課後の図書室。

兄貴と今日は久しぶりに帰る日だったから仕事が終わるまで本でも読んでようと来た。

「おーい。兄貴きたぞー。…って居ねぇのかよ。」


話し掛けても居ねぇし。職員会でもしてんのか?

兄貴に似て結構読書家な俺はお気に入りの本を読もうとあまり生徒が借りない奥の棚へ向かった。

その時だった。あいつが入って来たのは。


「失礼しまーす。」


「凌先生居ますか?」


透き通った可愛らしい声。


誰だ?こんな声のやつ俺の学年に居たっけ?

他の学年か?


声の感じからして小さくてほんわかした女の子なのだろうと思った。


読書にふけっていたがあの声の主が気になって本棚の影から覗いてみる。

ってか何俺ってば覗いてんだ?
出ていけばいいのに。


?つーか兄貴いんのかよ。

しかも仲良さげに話してるし。
髪長ぇー。ボサボサだし。

誰だ?なんか見たことあるけど、



思考を通らせて記憶を絞り出す。


脳裏を流れる今日の出来事。


『あっ…すみません。』


!!あ。思い出した!

あの口の悪い女、東条だ。