「……仕方ねぇな……ホントの事を藍川に話すよ。
俺は……お前に嘘をついてた」


えっ、嘘?なんの話し……。


「嘘ってどういう事ですか?」


「前に藍川が話していた雨の中、傘も差さずに立っていた男の話しだ」

その話しなら良く覚えている。藤崎斗真に似ていたと言ったら物凄く機嫌が悪くなったんだっけ。


「あれは、俺だ」


「えっ……」


「だから、雨の中、立っていた男は俺だ」


あれは、やっぱり藤崎斗真だったんだ。


「……なんで……違うなんて言ったんですか?」


「藍川に、あんなところを見られてたなんて、みっともないって思ったんだ。別れた理由はあいつの浮気だ。
吹っ切ったはずが、いまだに尾を引いてて」


「まだ元カノさんを思っているって事ですか?」


「違うっ。誤解するな。この間、何年間ぶりにあいつに会ってあのときの気持ち思い出した。裏切られたショックとかムカついて、そのあと情けなくなって……そういうのが頭んなかぐるぐる回ってて、あれから何年も経つのに一瞬であの時に戻っちまった。自分の中では、とっくに片付けたはずだったのに……」


だから……あんな顔を……あの時は凄く苦しそうで泣いているように見えた。

「じゃあ、あの雨の日に一緒にいた女の人って藤崎さんの元カノ?」


「そういうことだ。白状したんだからお前も話せ」