なんだかムッとして
俺もなんでもないような顔で
作業を続けた。


柏木は相変わらず
何にも見えないような様子で
机の横にかかった鞄を机の上に乗せ
ぺーケースやら、教科書を
次々に鞄にしまっていく。


俺はそれを柏木に気づかれないように
チラチラと見ていた。







すると、帰りの支度を終えた
柏木がどうゆう訳か
俺の方を振り返った。





そして、ゆっくりと歩み寄ってくる。





────な、なんなんだ………?……。



予想外の展開に動揺しながらも
平然を装って作業を続ける
フリをする。





柏木の華奢な指が、
ゆっくりと伸びて
座席表を指した。






「荒井さんのとなりは田部さんだよ」






透き通るような声。

突然のことに目をパチクリしてしまう。

5秒くらい経ってやっと、
自分の作った座席表は間違っていると
指摘されたんだと飲み込めた。




「……………お、おうさんきゅ……」




なんとか返事を返すと
柏木は無表情のまま頷いた。



「じゃあ、頑張って」



「え!?………お、おう……」



戸惑いまくりの裏返った声で
返事をしたころにはもう、
柏木は俺に背を向けて出口へ
歩き出していた。