生きたがる少し前。



僅かな、沈黙が訪れる。



────彼女が…………居た?









「お前………!
なんでそれを皆に言わないんだよ!!」






思わず、
胸ぐらを掴まんばかりに
詰め寄った。


柏木の無表情が、
驚愕に見開く。




「…………や、だって……
報告する程仲いい人居ないし、
第一、そんなことで女好きとか
言われてるとか知らなかったし……………」





言われてみれば、
確かにそうだ。

皆も俺も直接柏木に向かって
"女好き"なんて言ったことねーし
てゆーことは
柏木が誤解だと
否定する機会も無かっただろう。




「…………そう…だったのかよ」




脱力感に、思わずへにょへにょと
膝から崩るように柏木の横に
座り込んだ。




「…………言葉が足んねぇんだな
俺らも、お前も」



柏木は、そんな俺を
まっすぐ見詰めていた。




「俺がゆうのもあれだが、
柏木も、親とかに
相談しなかったのかよ?」



俺の言葉に、柏木は
その瞳を反らした。






「──駄目なんだ」





「なんでだよ?」




柏木の瞳は、
また俺を映さなくなる。