朝、学校に着けば、
斗真はもう来ているようだった。


廊下の隅で、派手目な男女を率いて、その輪の中心で愉しげに豪快に笑う。


斗真は、あたしの前では控えめに笑うだけだ。



目が合うと、罰が悪い顔をした斗真が、そっと目を逸らした。

……昨日は自分から話しかけて来たのに。


だからあたしも、気にしない素振りで歩みを進めた。


「昨日の月9見た?」「2年の清水って綺麗じゃね?」「わかるわー。でも彼氏居るって噂じゃん?」「うわ、今日数学俺当たるわ」「つーか英語小テストじゃなかった?」「うーわ、課題やり忘れた」「あたし課題終わったしー」


……いつだってその輪の会話は楽しそうで、喉から手が出る程羨ましかった。


斗真に気にせず話し掛けられる女の子が、よっぽど羨ましかった。