「はじめちゃんが斗真なら良かったのに」


小さくそう零す。

声になるかならないかくらいの大きさだったのに、はじめちゃんには届いたらしい。


「それは困る」

はじめちゃんは真顔で前を向いたままそう突っぱねた。


例えばの話なのに。

これだから頭の固い男は困る。


理屈的だからモテないんだぞ、バーカ。


内心で悪態を吐いた。



「庄田はそろそろ黒染めをしろ」


「んー。やっぱ重い?」


「あぁ、そのうちストーカーになるぞ」


「……ならないし。多分」


「そこは嘘でも言い切った方がいい」


それに2人で笑って、教室に入った。