結局避けるように部屋に籠り、その日はやり過ごした。
けれど気持ちの整理がなんでか付かなくて、物理的に彼女とは顔を合わせないようにするために暫くは家に寄り付かないようにファミレスのバイトを増やしてみたりそのままバンド練習のためにスタジオやらメンバー宅に転がり込んでみたりしてみた。
意識をしないふりをして湧き上がるモヤモヤに無理やり蓋をしてみたり。

誰にだって言えない過去とか、これまでの人生だとかあるのは分かってる。解ってはいるんだけど…。

「俺やっぱりやってること可笑しい…よな?」

行き交う車、大通り、繁華街。
かれこれ一ヶ月。まもなくライブは明日に迎えた昼下がり。
気合いを入れなければなのにどうしてもチラついてしまい集中出来ずにいる。
ベースを背に人の流れをぼんやりと眺めつつ橋に背をあずけ缶コーヒーを飲みながら自問自答。
これじゃまるで彼女に恋をしていると同義じゃないか。
まだこの街で出会ってから幾許もない、季節は少し寒くなりつつある秋の気配なだけ。
何もまだ変わってなければ変われてもいない。