雨の繁華街


人生に”もしもあの時”なんてないものだって、理解っている。けれど思わずにいられないほど俺はこの時のことを酷く後悔をすることになる。
これを皮切りに全てにおいて心を見せない彼女の本心に近づく度、触れるたびに辛く切ない思いをしなければならないだなんてこの時は思いもしなかった。


「咲ちゃんのバンドって、どんな感じなの?」

食事は終わり、俺は自主練と称して譜面を広げながらアンプの繋いでいないベースを掻き鳴らし、彼女は台所に立ち食器を洗っているようだ。
あまりにもガシャガシャと鳴らしているものだら、あまり集中して聞いていなかった。

「もう!咲ちゃんってば聞いてんの?」