「あ、あのさアヤさん。都心の、しかも新宿寄りの1Kならどこもこんなものなんだよ」

「へえー。わたし家から出たことなかったから知らない。やっぱり世界は見てみるべきね」

あの奇妙な出会い方から数日、彼女はもうすっかり俺の自宅にもご近所にも溶け込んでいたらしく、自由気儘に過ごし始めているようだ。
そして彼女の性格なのだろうか、素直というか減らず口というのか、思ったことはどんなことでも直ぐに言葉にする。これには俺はまだ慣れない。
俺の方を見ずに、先ほど買い足してきたものらしい彼女の私物や食材を袋から取り出し慣れた手つきで冷蔵庫に整頓していく。単身用のしかも飲み物しか入らないであろうそんな小さな冷蔵庫に野菜やら生鮮食品やらを見事に入れ込む。