その次の日、純子は学校に来なかった。

部活に出ても姿はない。

監督に聞いてもわからないと言われた。

私は純子の担任の先生に聞いてみることにした。

『先生、後藤さんはお休みですか?』

『おう、休みだぞ、しばらく入院だそうだ。』

『そうですか、わかりました。ありがとうございます』

『お見舞いに行ってやれ、順天大付属病院だそうだ』

『はい、行ってみます』

先生も私と純子の関係は知っているので私を励まそうとしているようだった。


土曜日になり、私は順天大附属病院に行った。

受付で純子の部屋を聞く。

外科病棟だった。

708号室だと聞かされた私は純子の好きなダンキンドーナツを小脇に抱え部屋を目指した。


部屋の前で純子の名札が掲げてあることを確認し、入室した。

4人部屋の入って右側奥に純子のベッドはあった。

家族もいないようで純子は寝ていた。

『純子・・・』

少しして純子は驚いた顔で私に気付いた。

『どうしたの?どうしてここが?』

『先生に聞いたんだ。どうしてこんなことに?』

『・・・』


純子は黙っている。


『教えて、どうしたの?』

諦めたような顔つきで純子は重い口を開き始めた。

『誠、私ね骨肉腫っていう病気なの。もう治らないみたいい。歩くこともできないかもしれない。』

『骨肉腫?』

『うん、骨の病気・・・』

私は初めて聞く病名に慄きを感じた。

・・・いったいどんな病気なんだろう・・・

純子は察したらしく、

『膝を怪我したでしょ?その時に痛みが引かなくて病院に行ったの。そしたら検査で出た結果が骨肉腫だって・・・。』

私は重くのしかかる何かをその時に感じていた。

『簡単に言うとね・・・骨のガン・・・』

聞きたくない言葉を聞かされた。まさに青天の霹靂だ。

私は努めて冷静に

『でも治るんだよね?』

と微笑むように聞いた。

『遅かったみたい。もう少し発見が早ければ治せたかもって・・・先生が言ってた・・・』

私は何も言えなかった・・・。
いつのまにか純子の手のひらを握りしめて泣いていた。

知らぬ間に・・・涙って意思とは関係なく出てくる時があるんだな・・・そう思いながら純子の手のひらの体温を確かめていた。