私は純子の衰弱していく姿・・・黒く変色していく体中を毎日抱きしめた。

なるべく弱く・・・力を入れるともう・・・。

『純子、もうすぐ3年生だよ。俺は都大会で優勝して全国大会に出場する。見に来いな。』

純子はコクリと力なく頷いた。

病室から神田川の桜の木が見えていたがまだ蕾は小さかった。


純子に夕食を食べさせていると看護婦さんが

『毎日ありがとう。純子ちゃんね、いつもあなたの話ばかりしているのよ。素敵な彼ね。本当に・・・うぅ・・・』

看護婦さんが泣きじゃくる。

もう純子に奇跡は起きないのは分かった。

でも少しでも傍にいて少しでも同じ空気を吸いたいと思った。

あの時の私は桜が咲く事を恐れていた。

自分でもその頃に純子を失う事が予感できていたから・・・。