どのくらいの時間、ボーっとしていたのだろうか・・・。

純子の家族が来ても私はベッドから退けなかった。

純子の母親に純子が私のことを説明しているのが微かに記憶に残っている。


私は項垂れながら

『いつもお世話になっています・・・。』

そういうことしか言えなかった。

足のガンが体全体を蝕みつくし、最後には純子までも遠い世界に連れて行くなんて事が現実として理解できないのだ。


そんな間にも純子は自分の彼氏であることを母親に告げていた。


純子の母は、
『そう、そうだったの・・・もっと早く言ってくれたら連絡したのに・・・。』

やさしい言葉をくれた。

少し救われた自分がいた。


中学生という身でありながら交際を認めてもらった・・・。

その事に小さな罪悪感も抱えていたから・・・。

だが現実にはこんな状態での公認は論外だったのも確かである。

私は世間話ができるくらいに落ち着きを取り戻してから純子の病室を出た。


帰宅途中の電車の中で人目も憚らずに大泣きした・・・。

窓の外は雨がシトシトと降り始めていた。