私が13歳時、野球で越境入学をした中学には校門に大きなコブシの木があった。

転校してきたばかりで知り合いも皆無。


ドキドキワクワクしながら担任の先生について教室に入る。


新しいクラスメイト達が視線を私に向ける。

痛いような、それでいて注目の的になった快感のような何かが、私を高揚させる。


『新しいクラスメイトを紹介します。』

先生が黒板に私の名前を書く。

『さあ、落合君、自己紹介をして』

そう促され


『昨日こちらに越してきた落合です。趣味は野球です。水泳と書道もします。これからよろしくお願いします。』

と、私は当たり障りない自己紹介に徹した。


皆に拍手で迎えられた私は放課後に部活の申し込みをした。


翌日から野球部の一年としての毎日が始まる。