私には好きな本がある。



だけど古い本で

もう書店には置いていない。


だから私は図書館に出かける。



ただ本を読むために――



借りればいい話なんだけど

あの場所で読むのが心地良い。



その図書館は人が少なくて

朝早く行くと私ともう一人しかいない。


そのもう一人の彼は

今日はどうやら勉強に来たらしい。


英語の参考書をいくつも持っている。


彼はいつも同じ席に座って

勉強している。



窓側なのに柱でちょうど

直接日が当たらないところだ。



ただ本を読むために

来たはずなんだけど

気づくと彼を見ている。


大好きで何度も読み返している本が

言い訳になってしまう。


ああ、だめだ。

私は本を読みに来たんだ。

本に目を戻す。


だが、背が高くて綺麗な顔立ちの彼が

紙に頭を悩まされていると

どうしても目が行ってしまうのだ。


これは何なのか。


確かめるすべもなく

私は胸のこの高鳴りに

身を任せることしかできない。



ある日 

彼が髪を金に染めた。


不良っぽくは無かったけれど

ただ短髪で金になった彼は

格好良かった。


だから、つい

見つめてしまった。


まさか彼と目が合うとは

思ってもみなかったんだ。