何かをいいかけたまま会話が終わってしまったような、そんな気分だった。




*歌凛*「聖司くん、どこかで倒れていないといいですけど…」




*蓮司*「何か言われたのかもね、聖司の両親から」




と、蓮司くんはポツリと呟いた。




私は、聖司くんなら大丈夫だと、帰ってこられると信じることにした。




ただ心配しているよりも、その方がずっといい。




*蓮司*「じゃあ、掃除しよっか。マダム・チェリーが帰ってくる前に」




*歌凛*「そうですね」




大方、蓮司くんの考えも同じようで、それ以上今日の聖司くんの様子について話題が上ることはなかった。




しかし、蓮司くんはやはり心配なのか、最初の20分は掃除中に何度も携帯を確認していた。




掃除と片付けをしながら、私はただただそのようすを静観する。




やがて蓮司くんは落ち着き、 掃除と片付けを真剣にやりだした。




私としてはものすごく有難い。




掃除自体は殆どの部屋を終えていたのだが、蓮司くんの部屋だけは、整理するのが大変すぎる。





私の部屋はまだそんなに散らかっていなかったし、聖司くんの部屋は片付ける必要など0だったので、実質的にはみんなが集まるような部屋と普段使われない部屋の掃除だけだったのだが…




蓮司くんの部屋に関しては想像以上に散らかっていた。




化粧をいきなりされたときよりも物が躍り狂っている。





そこで一際アンバランスに目立つのが、鏡台の上だけそれはもう綺麗に整頓された化粧類だ。




その周辺だけは驚くほどきれいなので、視線を動かしたとたん別の世界に移されたのかと錯覚してしまう。




とりあえず私はごみ袋を持ってきて、散らかっているごみをかき集めた。