絶対にあの声は日本全国に響き渡ってしまったと思う。
*聖司*「まあ、あながちあの顔真似も間違いではありませんでしたが…」
聖司くんが済ました顔でそう言った。
聖司くんが(私をからかうためとはいえ)嘘を言うとは思えない。
きっと、蓮司くんのスーパーオーバー演技ではなく、本当にあんな顔をしてたんだろう。
*歌凛*「つ、つぎにスミレと電話するときは、表情筋とよく相談します」
*蓮司*「えーでも斑__」
蓮司くんは明らかに危険な言葉を放とうとしていた。
それを最後まで言われてしまったら、その内容通りの事が起きてしまったら、
きっと、いや、絶対に、私は死ぬよりも辛い屈辱を味わうことになる。
だからこそ、私が不利なときに言わせてはいけないのだ。
神条 師龍と、世良 瑠美。
そして、冷泉 斑鳩の名前だけは…
*歌凛*「絶対に例の三人の名前は出さないでください。関わらせないでください」
早口で、でも蓮司くんに聞こえるようにいった。
このときばかりは演劇部で早口言葉を一緒にやっていてよかったと思った。
*蓮司*「すごい拒否反応ぶり…」
*聖司*「まあ、あの三人の話さずにはいられない正確と根掘り葉掘りきく図太さはときどき恐ろしいですからね」
全くもって、全くもってその通りです。
ルミちゃんは結構無害な存在だけど、あまり口が固くない。
ふと隣を見ると、さっそく内緒話を別の人間に話している。
私の過去も、知らぬ間に広まっていた。
幸いなことに噂は膨れ上がることもなく、「昔は少し気性が悪かった」ぐらいにしか広まらなかったが、危険すぎる。
蓮司くんも、ゲイだということを隠したいのによくルミちゃんに話したなと思う。
さらにあんなに話さずにはいられないルミちゃんが、よく今まで何も話していないなと思う。



