それは恐らく蓮司くんが聖司くんを追っかけてきたのだと思う。




うちの学校は、確かに少しレベルが高いから、きっと聖司くんと同じ高校に入るために一世一代の猛勉強をしたのだろう。




ちょっと胡散臭いかもしれないけど、“愛の力”なんだろうなぁ。とても素敵だと思う。




*聖司*「…話がそれましたが、とにかく、私はレールから逃れるために何度も両親を説き伏せました。

今まではなんとかやり過ごしてきましが、
それもいつ破られるやら。

次に会うときには、私の方が説き伏せられるかもしれません。

歩きもできないレールの上に戻され、最終的には比べられる。」




聖司くんは、悲しそうというよりも、哀れむような眼差しでそういった。




まるで他人の人生を遠いところから眺めているかのように。




きっと今の聖司くんの状態は、推察するに、話している自分と、聞いている自分の二人が存在しているのだろう。




恐ろしいほど主観的に話して、恐ろしいほど客観的に、自分の言葉を聞いている。




*聖司*「これで終わりです。
自分の人生から逃げ出しているだけだと思うでしょう?臆病者だと。」




*歌凛*「い、いえ、そんな。」




聖司くんは我に返ったかのように私へ向けて言った。一人言とは違って、誰かが聞いていることを前提として。




*歌凛*「臆病者だなんてちっとも思いませんよ。
私に限らず、きっと蓮司くん達だって。」




私は聖司くんの話を聞いて思ったことは、
“自分の人生を自分のものにして生きている”ことを立派だと思った。




しかも、ご両親になんと言われようと、それを曲げずに今も突き通しているのだから。




*歌凛*「私は聖司くんみたいに、はっきりと自分がどうしたいか考えて、その通りに行動するなんて事、簡単にはできません。

もちろん、簡単ではなかったのかもしれないけれど。


だから、寧ろ尊敬します!すごいなって。」




*聖司*「…似ていますね。」




聖司くんはフッと笑いながら呟いた。