さっき見たときは気づかなかったけど、写真立てが置いてあった。




5人写っている。あれは、家族写真?




全員凛々しい顔でカメラを見ている。




一番小さい男の子が恐らく聖司くんで、まだ小学生くらいだろう。眼鏡はさすがにしてないけど。




隣には、中学生くらいの別の女の子と、高校生ぐらいの大人らしい男の子がいる。




その後ろにご両親と思われる綺麗な女の人とキリッとした顔立ちの男の人。




五人とも、誰も笑っていない。無表情で、まっすぐな眼差しでカメラをみていて、まるで……




*聖司*「まるで、仮面を被った家族のようでしょう?」




*歌凛*「え……」




何て答えていいかわからない。




人の家族にそんなこと言えるわけもない。




私はなにも答えないつもりでいた。




*聖司*「いえ、別に嫌味を込めて言った訳ではありませんよ。私もそう思いますから。」




聖司くんは尚も笑って答えた。




私は一体、何を言えば正解なのだろう。




答えないつもりでいたのに、聖司くんへの最善の返し方を考えていた。




聖司くんは確実に今、困っている。と直感的にそう思ったからだろうか。




私はなぜか、話を聞きたい、何か助けになりたい、そう思った。




長い付き合いの蓮司くんが聞いてくれた方がずっと役に立つとは思うけど、口は勝手にペラペラと喋り始めた。




自分の口ですらコントロールできないなんてロボット以下の気分だ。




*歌凛*「あの、余計なお世話なのは重々承知してるんですが、教えてください。
聖司くんのご家族のこと。」