う ん め い の ひ と



見慣れない後輩の男の子達


後輩が見学しにきて、少し浮足たっている部員達


キュッキュッ
バッシュと体育館の床が擦れる音


汗と誇りの混じった匂い


そして、恋の予感!!!


「ね!ね!ねねね!マユ!!やばいよやばいよやばい!」


「もー、なによ、早く仕事してよ。今日から見学だから呼び込みとか、ほら、さっさとやってきて」


「ちょっ、なにもおもわないの?!あのイケメンの数を!」


「んー、年下興味ない。早く仕事して」


私とマユはバスケ部のマネージャー

中学までずっとバスケをやっていた。
高校でもやるつもりが、男子バスケ部しかないことを知らず見学にいき、一個上の松崎先輩にひとめぼれ。


速攻入部して、とりあえず毎日毎日猛烈アタック


私の猛烈アタックで先輩と5月に付き合えたものの…


毎日一緒帰るのが義務とか、男と話すなとか色々面倒くさくて


2週間で別れた…


あながちマユの言ってることは間違ってないのかも…


はぁ、運命の人早く現れて欲しいな〜


そんなこと思いながらマユに渡されたビラを新入生らしき人達に渡す


「信じらんない!最低!浮気男!」

え、なに?


「本当に誤解だって、ね?リンちゃん〜、怒らないでよ〜」


「もう無理、信じられない、別れよう」


「はぁ〜、わかった、まあ、また遊びたくなったらいつでも遊んであげるから」


「はあ?!なに?!うちとの付き合いは遊びだったてこと?!!信じられない!くそぶす!死ね!」


女の子は大勢の中で男に暴言を吐き散らしその場を去った


(うひょ〜、やば)


「何回か遊んだだけで勘違いされるのも困る困る」


愚痴を呟くチャラ男


(こんなチャラいやつ見たことないな〜。
サンダル青だから1年か〜。
面倒くさいし、関わらないでおこっ)


その場から離れようとした時


なぜか神様は意地悪なんですね


強い風が吹く


乱れる髪の毛


舞い上がるたくさんの勧誘のビラ


そしてどこからか香る、春の優しい香り


「あっ、ビラが」


慌ててビラを拾う私

見上げるとさっきのチャラ男

最悪だ

お願いだから関わらないで

「拾うの手伝いますよ」

「え、あぁーあ、いいよ!大丈夫だよ!」

「って、あー、もう拾っちゃいました」


栗色の髪の毛


長いまつげ


白く綺麗な肌にピンク色の唇


「美少年…」


思わず口に出してしまった言葉

顔が赤くなるのが自分でもわかった


「え?」

「え、やっ!その!美少年隊ってしってます?!」

(こんな苦しい言い訳するなんて、恥ずかしいぞ自分)


「それ少年隊ってやつじゃないですか?」


クスッ、と笑うチャラ男


「あーあ、そうそう!いやぁー、最近はまってて、ははははっ!拾ってくれてありがとう!じゃあ!」


「あー、はい、これ」


微かに触れた手


じんわりそこから湧き上がる暖かさ


なんだろう、この感じ


「あ、あありがとう、拾ってくれて!これ、1枚あげる!」


「1枚しかくれないんですか?」


「え?」


ポカンと口を開けて、チャラ男に聞き返す


「ぷっ、可愛いですね。1枚、もらっておきますね」


(あ、冗談か)


「あ、うん、じゃあ!」


「はい」


にっこり笑うチャラ男の顔があまりにも綺麗で
目を逸らしてしまった


顔が熱い


チャラ男に背を向けて歩き出す


何故か、後ろを振り向きたくなるこの感じ


ああ、とてももどかしい


これが、彼との、椎名いぶきとの出会いだった