「そうじゃないよ。
君は君自身の力で変われるってことを言いたかったんだ。

勇気を出して話してみれば、分かりあえることもある。」

「違うな。
同情されて終わり。
助けようとするヤツなんか誰もいない。

同情するならなんとやら、ってやつだ。

それが出来もしないクセに、話なんか聞きたがんな。
ただの精神科医になにができんだよ…!」

ただの精神科医、か。
丁度信号が赤色に光り、車は止まった。

「…なんで僕が精神科医になったか、教えてあげようか?」

「…なんだよ、急に。」

「…実は僕にも、今まで誰にも言えなかったことがあるんだ。

それも、たくさん。
だから…佐那斗君が自分のことを話してくれるなら、僕も勇気を出して、誰にも言えなかったことを佐那斗君に話すよ。」

「…あ、そ。」

うーん、あまり興味を持たれてないのかな。
それじゃあ…

「手始めに、一つ話すね。」

ハンドルを握る手に力がこもった。

「僕には君の気持ちが痛いほど分かる。」

「…、」