『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

久城さんの顔には、何故だろう…といった表情が浮かんでた。

あたしは自分の方が信じられない気持ちが強かったから、逆にどうして…と聞きたくなった。


「ばあちゃんが認知症…って、どうしてそう思うんだい?」


久城さんの質問に、なんて答えたらいいか…と迷った。

老人福祉施設で働いてたから…と言うのは簡単。
でも、それはあまり口にしたくない事実だった。


「…テレビとかで見たり、聞いたりする症状に似てるからです…。アルツハイマーっていうの、聞いたことありませんか?」

「あるけど…」


言葉少なく答える久城さんが、黙っておばあちゃんを見つめる。
食べるよりもこぼす方が多い人は、何かに取り憑かれたような感じで食事を進めていた。


「昨日一日、一緒に居て思ったんです。いろいろと困ってそうだな…って。病院とか行かれてるのかな…とか、勝手に心配してました」


食べて下さい…と箸を進め、自分も箸を持ち直す。


食べながらおばあちゃんの食べてる姿を観察する。
どの程度のことが出来て、視界はどの辺りがよく見えてるのかを見極めながらの食事風景。


…気がつくと、視点はいつも施設でしていたことと同じになってた。
相手が認知症高齢者であると知った時点で、あたしにとっては、誰もが同じに見えてしまった。


特別な人だとは思えなかった。
結婚する人の祖母と言えど、不安や混乱を抱えた人には違いない。
ただ、これまでと違うのは、この人とは24時間一緒にいるということだ。